◎ピロリ菌とは?


最近TVや新聞でも大きく取り上げられているピロリ菌、あなたはもうご存じですか?
ピロリ菌は胃の中に生息している細菌で、強い胃液の中でも平気で生き続けることの出来る菌です。

通常、胃の中は胃酸(塩酸が主成分)という強い酸があるので、ふつうの細菌は繁殖することができません。
ところが、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を持っていて、これの働きで自分の周りの環境をアルカリ性にすることが出来るため、胃液の中でも生き続けることができるのです。

この菌は1983年に、オーストラリアのワレンとマーシャルという研究者が初めて胃の中にピロリ菌がいることを証明しました。
感染経路としては5才以下の小児期に口を介した、経口感染が大部分だろうと考えられています。

pylori_therapy1.gif

上の図は日本人の年齢による感染率の推移をあらわしたものです。
これを見るとおわかりのように、40歳以上になるときわめて高い感染率(80%前後)で、多くの人がピロリ菌に感染していることになります。
高齢者に多いのは昔の上下水道等の衛生環境が整っていなかったためと言われています。

このようにピロリ菌に感染している人は多いのですが、もちろん全員が潰瘍になるわけではなく、ごく一部分の人が潰瘍になるわけです。
日本人のピロリ菌感染者は約6000万人と言われていますが、ほとんどのピロリ菌感染者は症状もなく、普通 の健康人となんら変わりありません。
逆に、胃・十二指腸潰瘍の患者さんからみると、9割の患者さんがピロリ菌感染者なのです。


◎ヘリコバクター・ピロリと潰瘍・がんとの関係


その後のさまざまな研究が急速に進み、最近では沢山のことがわかってきました。


胃・十二指腸潰瘍の患者さんはピロリ菌に感染していることが多く、潰瘍の再発や治りにくさにこの菌が関係が深いことがわかっています。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の人がピロリ菌を退治する「除菌療法」を行うと、大部分の潰瘍の再発が抑えられることがわかってきました。


上は胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者さんに除菌療法を行い、除菌できた人と出来なかった人に分けて調べた潰瘍の再発率のグラフです。
これを見ると除菌した人は1年経っても低い再発率であることが一目でわかりますね。

さらには胃癌の発生にも大きく関与しているとされています。
われわれ日本人に多い胃ガンとピロリ菌との関係は大いに興味を引くところですね。

胃がんのほとんどはピロリ菌感染が原因と言われています。ピロリ菌を撲滅すれば、将来は胃がんは非常に珍しい病気にになるかも知れません。


◎ヘリコバクター・ピロリ除菌療法について


多くの潰瘍は抗潰瘍薬により治るようになりましたが、服用を中止すると再発するやっかいな病気です。
ところがピロリ菌に感染している人では、この菌を退治することにより、薬を飲まなくても再発しなくなるようなことがわかってきました。また、除菌をする事により、胃がんの発生率を抑える、つまり胃がんを予防する事が可能になりました。しかも胃がん予防効果は、年齢が若い段階で除菌をするほど高い効果が得られる事もわかってきました。

実際の除菌治療は2種類の抗生剤と1種類の胃酸分泌抑制剤を1日2回、7日間飲むだけです。

当院では除菌治療成功率が格段に高まる、P-CAB(商品名タケキャブ)という新しいタイプのお薬を使用しています。 当院では一次除菌は「ボノサップ」、二次除菌は「ボノピオン」という、除菌に必要な3種類の薬がセットになったパッケージを使用しております。
日付通りにお薬を飲むだけなので、間違いも少なく簡単になりました。もちろんこの中にはP-CABが含まれています。

下に診断・治療の流れを図に示しました。

 

 


◎ヘリコバクター・ピロリの検査方法について


ピロリ菌がいるかどうかを調べる方法には、内視鏡(胃カメラ)を使う方法と使わない方法があります。
1回目は原則的に内視鏡を行うので、内視鏡から生検(内視鏡により胃の組織を少しだけ取ってくる検査)をすることにより調べます。

当院では迅速(じんそく)ウレアーゼ試験を一回目のピロリ菌の存在診断に用います。
これはピロリ菌のもつウレアーゼの働きを検出しているかいないかを判定する検査です。
ほとんどの場合、陽性例だと10分前後で判定できる簡単な検査です。
この検査は大変よい検査ですが、菌のいる部位は胃の中でばらつきがあるので、もし菌のいない場所を生検してしまった場合、他の部位に菌はいるのに陰性と判定してしまう場合もまれにあるようです。
必要により、他の検査と組み合わせて判定することもありますのでご了承下さい。

除菌治療が終わり菌が退治できたかどうかは、内視鏡を使わない「尿素呼気試験(にょうそこきしけん)」という検査を行います。
これは検査用のお薬(少量の尿素)を服用し、15~20分経過後に吐き出した息を袋に入れ、その呼気を分析します。
この検査は胃の中全体に対して調べることができるので、除菌の判定には優れ、患者さんの負担も少ない検査法です。

 


◎除菌療法の効果と副作用

最新のP-CABを使用した除菌治療では90%以上の方が除菌に成功することがわかっています。
ただし期間中、薬を飲み忘れたり、途中でやめてしまうと、除菌率は悪くなります。

また、除菌中の飲酒は成功率を低めてしまうので除菌期間中は禁酒とさせていただきます。


さて、除菌療法で9割は除菌できても、残りの1割の方は除菌できない計算になりますね。

残念ながら除菌に失敗した方は、「再除菌療法」と言って、薬の組み合わせを変えて、再度7日間除菌療法を行います。
この方法で、1回目の除菌で退治できなかった方でも、かなりの割合で除菌に成功する事ができるのです。

除菌治療薬による主な副作用は、 下痢・軟便、味覚異常、食欲不振等の消化器症状、発疹等の皮膚症状、などが報告されています。
中でも比較的頻度が高い副作用として下痢・味覚異常があります。

軽い下痢・軟便、味覚異常の場合、我慢できる範囲であればなるべく一週間服用してください。

途中で中止し、中途半端な除菌をしますと「耐性菌」が生まれ、次回の除菌が非常に困難になります。

副作用がひどい場合にはやむをえず中止にすることもありますが、中止する前にかならず病院に連絡し、指示をお受け下さい。
治療法の安全性・効果についてはさまざまな研究にて十分立証済みですので、どうぞご安心下さい。

当院ではこれまでに多くの方々の除菌を行っております
不思議なことに、除菌に成功すると体質が変わったように食欲が増し、やせていた方も(潰瘍のある人はやせた方が多いようです)体重が増えるという効果もあるようです。
もし、胃潰瘍や十二指腸の再発にお悩みの方、家族に胃ガンの多い方、いつも胃の調子が悪い方がいらっしゃいましたら、当院に一度ご相談下さい。

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