早坂民奈さん
大蔵村の民生委員や学校教育相談員を務めたほか、様々なボランティア活動を通して地域に貢献。
2015年、大蔵村議会議員選に出馬し、当選。大蔵村では村政初の女性村議になる。
「地域づくり応援団 キラッとO〜RA☆DA」代表としても活躍中。

佐藤亜希子さん
新庄商工会議所 総務課長。
プライベートでは、チェリア塾(第2期修了生)の受講をきっかけに地域活動に携わるようになる。
現在は「最上地域女性応援会議」の代表として、30〜40代のモガジョメンバーを引っ張っている。


佐藤  お互いに自己紹介からはじめたいと思います。早坂さんは「地域づくり応援団 キラッとO〜RA☆DA」の代表でいらっしゃいますが、まずはプライベートの部分をお聞かせいください。

早坂  私は2015年から村議会議員として大蔵村の地域振興に力を注いでおります。出身は米沢で、結婚後は夫の転勤で各地を転々としてきました。
4人の娘がおります。四女の中学入学を機に、三女・四女と共に主人の実家がある大蔵村に帰ってきました。

当時は夫の両親と伯母がおり、明治生まれの義父との暮らしがスタートしたわけです。
最初は専業主婦をしていましたが、地域を知るため外に出ようと、まずは民間企業に勤め始めました。

その後、大蔵村から学校教育相談員を委嘱されたり、民生委員やボランティア団体の代表を任されるようになり、地域の方々との繋がりが少しずつ広がってきたという感じです。
現在は娘家族と同居し5人家族、孫と一緒に楽しい毎日を過ごしています。

佐藤 私は平成4年から新庄商工会議所に勤務しています。
生まれは真室川町で結婚後新庄市に住んでおります。現在は夫と息子の3人暮らしです。

仕事では、昨年4月に総務課長という役職を任されることになり、それまで一般職員として勤めてきましたので、正直戸惑う気持ちもありましたが、「何事も前向きに向き合おう」と気持ちを切り替えて、職場の人たちに助けてもらいながら、良い環境の中で働いております。
息子が新庄から山形の高校に通っておりますので、毎日朝が早くて大変ですが、夫も協力してくれますので、仕事もプライベートも、もちろんモガジョの活動も頑張ることができています。

さて、早坂さんは大蔵村で女性初の村議になられたわけですが、何事も初めてというのは勇気がいることと思います。
村議になろうと思ったきっかけは何だったんでしょう?

早坂 東北公益文科大学の伊藤眞知子教授との出会いとキラッとO〜RA☆DAが誕生するきっかけとなった最上総合支庁主催の講座ですね。
眞知子先生の「出る杭は打たれるけど、出過ぎる杭は打たれない」というのがとても印象に残りました。

村の民生委員などを引き受けるようになってから、周りから村議になるのを勧められることもあったんですが、私がそれまで色々な役を引き受けてきたのは、自分たち夫婦が各地を転々としてこられたのは高齢になった両親を見守ってくれた人たちがいたからこそなので、何とか村に恩返しをしたいという気持ちからなんです。
だからそんなお誘いを受けても「絶対にならない」と言っていたんです。

でもある時、知人から「今のままのあなたでいいのよ、もうすでに人のために活動してるじゃない!」と言われ「今のままの自分でいいんだ」と思ったんです。
村議選が近づいていた時期で、今回も無投票になりそうだという雰囲気でした。
自分の中で「無投票でいいのか?」という疑問が生まれ、それがスタートでした。

佐藤 「今のままでいい」というお言葉、周囲からの厚い信頼がうかがえます。お人柄なんでしょうね、本当にうらやましいです。
私も伊藤眞知子先生は憧れる女性の一人ですね。

年程前に山形県主催の「チェリア塾」を受講した際、眞知子先生には大変お世話になりました。
「男女共同参画社会」という意味もよく分からずに受講したんですが、男性も女性もお互いの考え方を認め合うことが暮らしやすい社会実現に繋がることを知りました。
早坂さんの挑戦のきっかけが眞知子先生だったことはとても納得です。


"女性の声を届けていく"

佐藤 実際に出馬するにあたり、不安やご家族の反対は無かったんですか?

早坂 幸いなことに、当時現職の村議の方々は全員知り合いだったので、まったく知らない場に突然入っていくという不安感は無く、家族の反対も特に無かったんです。
選挙戦は初めてだったので大変でしたが、慣例にならうのではなく、ルールに従った新しいスタイルを確立したいと思い、支援者の方々の理解を得ていきました。

佐藤 そして見事当選されたわけですが、実際に村議になられてどうでしたか?

早坂 大きな違いは、議員になった今は「やって当たり前」ということです。
なる前と後では有権者の求めるものが変わってきます。内容も多様化していますから、正直、様々な葛藤も生まれます。
でも決めたのは私自身ですから、揺らぐ気持ちは支援者の方々に申し訳ないですし、私を信じて一票を投じてくださった方々に中途半端な姿は見せられません。

まずは会合の案内が来たら、可能な限り出席するように心がけています。
すべてが勉強だと思っていますから。
村のために何ができるか、目の前にあることに一つずつ取り組んでいくだけです。

佐藤 少子高齢化が進む中、地方の小さな自治体が抱える課題は益々多様化して増えていくと思いますが、村民にとって早坂さんの存在は心強く映っていると思います。
住民の、特に女性の声を政策決定の場にあげていくことは、いわゆる「生活者目線での政策」が実現できるような期待が持てると思います。

早坂 議会の場に女性がいるだけで風穴が開いたような感じです。私はまだ一期目ですから、分かったふりはせず議会に臨むようにしています。
議員になってから、村のことや最上地域のことについてより関心をもって勉強するようになりましたが、でも本当は、地域のことはそこの住民全員が自分のこととして日頃から関心を持つべきなんですよ。
私のぶれない軸は「村政に女性の声を届けること」ですから、議会での質問も女性の視点で考えたことを出すようにしています。

佐藤 女性村議が誕生しなかったら有り得なかったことですよ。特に福祉や教育の分野では、かかる期待も大きいのでは?

早坂 そうですね。これまで村の民生委員や学校教育相談員をしてきた経験から、自分にとっては自信のある分野です。
今、大蔵村では、若者たちが未来を語る会合の場を設けるなどして人材育成を図っています。
役場職員や農業従事者、観光業の方など様々な分野から若手が集まって村の未来について話し合うんです。

これからは次の代のことを考えた村政が大事になってきますから。
大蔵村には志のある若者が多くて頼もしいですよ。
そういう若者をしっかり育てていくのが私たちの役割なのかもしれませんね。

佐藤 早坂さんが村議として心がけていること、村民の皆さんとの対話で努力されている点はありますか?

早坂 支援者の方々に対して活動報告のお便りを作って配っているんですが、その配布は手渡しにこだわっています。
ポストインだと声が聞けないでしょう?改まった場ではなく普段の会話で聞き取る声って大切なんですよね。
でも、実際訪問してみると、お留守のお宅も多くてタイミングがなかなか合わず、数回分をまとめて届けてしまうこともあるんですよ。その点は今の反省点なんですけど。


"一人ひとりが活き活きと輝ける社会を目指す活動"

佐藤 村議のお仕事もされて大変お忙しい中で、O〜RA☆DAの活動では代表も務められている早坂さんですが、まずは団体発足の経緯や活動内容について教えてください。

早坂 平成24年、地域における男女共同参画を推進し地域課題を解決していくため、最上総合支庁が主催した最上地域の女性団体ネットワーク構築事業「ふるさとを元気に、〜女性から輝くもがみの地域づくり 初めの一歩〜」で各地域の女性団体や市町村が連携し、アクションプランを発表したことが立ち上げのきっかけです。
翌年発足したのが「地域づくり応援団 キラッとO〜RA☆DA」です。
最上地域における男女共同参画社会推進のため、50〜70代の真ん中ばんちゃん世代の女性が中心となって、最上に住むみんなが輝きながら助け合える地域社会を目指す活動をおこなっています。

メンバーは民間、行政の枠を超え、多方面で活躍しながらそれぞれが別団体にも所属しています。
メンバーが有する情報、ネットワークを活用することで分野を超えた層の厚い取り組みにつながっています。
活動は、地域再発見のための見直しや食を通した異世代交流に自分磨きなどがメインになっています。

佐藤 私たち最上地域女性応援会議が誕生したきっかけも「活き活きモガジョ養成講座」という最上総合支庁主催の事業でした。
日々の生活の中にある課題や疑問を解決して一人ひとりが輝いて暮らしていくため何ができるかを考える講座で、最終的に3つの課題解決プランを作成しました。それを案だけに終わらせず実行していくために団体を発足させました。

活動初年度となる平成27年度は、メンバーそれぞれが「デキルオンナ」を目指して企画したスキルアップ講座を2回、ちょっぴりお洒落をしてお酒を飲みながら女性活動者らが情報交換をする交流会を1回、「Mogami Women’s Festival 〜最上地域の女性の祭典〜」と題したイベントを開催しました。
フェスでは女性ならではの視点で企画した4つのワークショップと、当時、㈱資生堂の常務執行役員を務めておられた最上町出身の関根近子さんを講師にお招きした講演会は特に反響が大きく、定員を上回る参加者が集まりました。

活動2年目となる今年度は、最上地域で活躍している女性を発掘し、地域内外に発信する事業を展開しています。


"活動における課題、今後の目標や方向性"

佐藤 私もモガジョの代表をさせていただいていますが、代表とは名ばかりでメンバーにおんぶにだっこの状態というのが現状です。
早坂さんは代表をされていて大変だと思うことってありますか?

早坂 うちの場合は個々のメンバーはそれぞれの地域で活躍している方々なので、たくさんの意見が出てくるんですね。それを一つにまとめるのが一番大変かな。

佐藤 そうですよね。こういう団体で活動しようと思う人は、熱い思いや自分の考えをすでに持っている人が多いですからまとめるのは大変ですよね。

私も最年長ということと、前身の講座の企画に携わったという経緯から代表を引き受けましたが、基本的には、自分がどうこうというより、まずはメンバーがやりたいことを実現していければと思っています。
迷った時は原点に振り返って、それを全員で共有していけば継続していけるのかなと思っています。

早坂さんはO〜RA☆DAの活動の中で「やってきて良かった」というエピソードはありますか?

早坂 「地域の宝を知ろう」シリーズで、自分たちの身近な町や村を再発見できたことが良かったですね。
メンバーからも「参加してよかった」という感想が多く寄せられました。

私たちは団体名にも記されているとおり「地域づくり応援団」ですから、ここに住む人々の望むことや取り組んでいることを応援できたらと思っています。
モガジョさんもとても良い活動なので、多くの人に知ってもらって活動の幅を広げてもらいたいですね。

佐藤 ありがとうございます。まずは自分自身のスキルアップからスタートしたので、これからだと思っています。
私たちは人数も少ないので仲間を増やすことも課題ですし、今後は次世代のモガジョを育てる事業も展開していきたいですね。

早坂 場づくりは大事ですね。
女性が各市町村を超えて広域的に活動する場、そういう組織って今までなかったんですよね。
よく最上地域とひとくくりにされますけど、実際にはそれぞれの市町村に違いがあって、それを知ることも大事だと思うんです。

50代以降の女性は、子育ても一段落した人が多くて、親の介護で外に出るきっかけやチャンスが案外少ない世代なんですよ。
そういう世代の女性の集まる場が「キラッとO〜RA☆DA」なんです。
最上地域の50〜70代の真ん中ばあちゃんたちが楽しんでがんばれるような地域をつくっていくのが私の夢ですね。

そして女性の声をもっとたくさんの場所に届けたいです。
あとは、私は代表になって3年目ですが、引きどきの見極めも大事だと最近感じています。
でも代表をかって出てくれる人ってあまりいないのよね。

佐藤 確かにそうですね。組織改編は団体の活動に動きを出して良い循環を作るための手段の一つではありますよね。
団体の将来をしっかりと考えていらっしゃるところを私も見習いたいです。


"地域独自の特色や良さに気付き磨いて広く発信していく"

佐藤 早坂さんは米沢市のご出身ということですが、最上地域に嫁がれて感じるこの地域の良さや最上地域が誇れるところははどんなところだと思いますか?

早坂 豊かな自然と多彩な食文化ですね。
それから地域に根差した伝統芸能も素晴らしいものがたくさんあります。そういうところをもっとアピールしていければいいですよね。

そして、ここで暮らしている私たち一人ひとりがもっと自信を持つべきですよ。
それにはやはり他を知ることが大事です。外に出て経験を積むこと、それがきっと自信につながっていきますから。

佐藤 私はずっとこの地域で暮らしているので、自然の豊かさや食文化はごく当たり前のことだと思っていました。
改めてお話いただくと、地元に住んでいる人こそ自分たちの地域の魅力や価値をもっと認識するべきですよね。

それと、近年は地震や異常気象など想定外の災害が全国各地で増えていますが、最上地域は災害の少ない地域だということは最近特に感じるようになりました。
これって本当にありがたいことです。
地域の良さは具体的に言葉にしなければ外の人には伝わらないし、私たち自身が良い点をどんどん見つけ磨いていく、それを自信を持って発信できる地域にしていきたいです。


"最上地域に暮らす女性たちへ 一歩を踏み出すメッセージ"

佐藤 この地域には、まだまだ一歩を踏み出せず悩んだり迷ったりしている女性がたくさんいると思います。
ですが、勇気をもって一歩を踏み出す「場」や「チャンス」は誰にでも必ずあると私は思っています。
その小さなきっかけに自ら気づいていくことが大事ですよね。
最上地域で暮らす女性の皆さんに、早坂さんから勇気が湧くメッセージをお願いします。

早坂 人との繋がりを大切に育てていくことが大事ですよね。
それから、独特の文化が根付いている最上地域には他と比べても良いところがたくさんあります。
私たちがこの地域で生きてきた証を、自信をもって次世代につないでいきましょう。

佐藤 ありがとうございます。力強いメッセージですね。次の世代につなぐ役目が私たちにはあるんですね。
ぜひこれをご縁に、モガジョとO〜RA☆DAが協力して事業ができるといいなと思います。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。